定置網は全国に多数あり、漁獲される魚種も季節によって、また地方によって多種多様で100種を超えると言われています。ここでは漁獲量の多い主要な魚種を紹介します。
国が行っている魚種ごとの資源評価及び漁海況予報等については「わが国周辺水域の水産資源の現状を知るために」を参照してください。
全国の漁獲量は1990年以降増加傾向にあり、特に大きく増加した2010年以降は毎年10万トン前後で推移している。ブリは定置漁業を支える代表的魚種の一つであるが、2000年頃からまき網による漁獲が定置を上回る年もあったが、2017年以降は定置の方が多い。日本海の“寒ブリ”はブランド品としても有名。寿命は7年前後。
全国のサバ類全体の漁獲量は近年50万トン前後で推移している。三陸から常磐海域が主漁場の太平洋系群は、1978年の121万トンをピークに1991年は2.6万トンまで減少、その後増加して2020年は27万トンである。また、東シナ海から日本海で漁獲される対馬暖流系群は、1974年には35万トン獲れたが2020年は8万トン程度である。何れも大半はまき網での漁獲であるが、定置網でも2020年は6万トン漁獲された。
太平洋全域で漁獲される太平洋系群と東シナ海・日本海で漁獲される東シナ海系群からなる。2012年までは全国で20万トン前後の漁獲であったが、それ以降減少し、2020年は5万トン程度の漁獲となっている。定置網で漁獲されるものは太平洋系群が主体で、東シナ海系群は大半がまき網による漁獲である。寿命は6年程度。しめさば、焼き魚、缶詰、サバ節などに利用される。
1980年代には200〜300万トン(1984年の418万トンが最大)の漁獲があったが、1990年代に急減し、2000年代には10万トンを下回る水準まで低下した。近年は増加傾向にあり2020年は約70万トンになっている。魚種交代(レジームシフト)の典型としても議論の対象。定置網でも2020年には6.7万トン程度の漁獲がある。資源は、太平洋系群と対馬暖流系群に分類され、大半はまき網で漁獲される。寿命は7年程度。
全国の漁獲量は1990年代に40万トン前後に増加、2004年以降減少し、2020年は14万トンである(シラスを除く。)。常磐から房総沖で漁獲される寿命4年の太平洋系群と瀬戸内海、薩南海域で漁獲される寿命2年の瀬戸内海系群及び日本海で漁獲される寿命2・3年の対馬暖流系群の3群がある。太平洋系群は船曳網・まき網、瀬戸内海系群はまき網・船曳網、対馬暖流系群は日本海北区では主に定置網、日本海西区・東シナ海区では主にまき網で漁獲される。
全国の漁獲量は近年5〜10万トン前後で推移している。日向灘から豊後水道にかけてまき網、定置網で獲れる太平洋系群と東シナ海から日本海にかけてまき網、敷網、定置網で獲れる対馬暖流系群に分かれる。定置網では1~2千トン程度漁獲されている。寿命は2・3年程度。高鮮度のものは刺身で、干物も珍重される。
全国の漁獲量は1990年代には約30万トンあったが、その後は減少し2010年代は15万トン前後、2020年は約10万トンで推移している。寿命は5年程度。まき網による漁獲が多い。九州南岸から東北太平洋に分布する太平洋系群と東シナ海から日本海に分布する対馬暖流系群がある。
全国のサケ・マス類の漁獲量は、近年減少傾向にあり、2020年は6万トンであった。このうちシロザケ(秋ザケ)が9割程度を占め、その殆どは人工ふ化放流によるものである。その他カラフトマス、サクラマスなどが漁獲される。漁法は、北海道、東北ともに定置網によるものが大半であるが、一部はロシア海域、日本周辺でのはえ縄や刺網による漁獲もある。産卵のため4年で回帰(3年、5年回帰の群もある)し、寿命を終える。
人工ふ化によるものの他、天然産卵によるものも多い。分布は、北海道から東北地方に及ぶが、漁獲は、北海道オホーツク沿岸の定置網による漁獲が主流。2020年は約5千トンの漁獲。産卵のため2年で回帰し寿命を終える。北海道では「セッパリマス」と呼ばれており、加工品としてはマスの缶詰等に利用されるものが多い。
主に底曳網、刺網、定置網、延縄によって漁獲される。成魚は非常にどん欲で「鱈腹食べる」はマダラの生態からきている。ヨーロッパ、アメリカ、カナダなどの北半球では最も重要な魚である。日本近海では主に北海道周辺海域に分布している。現在、各地の資源管理計画で小型魚の再放流、種苗の放流などの取組みが行われている。日本の関東以北では古くから寒い時期の鮮魚としてもっとも重要な魚種で、汁に鍋(たらちり)材料として寒い時期に欠かせない。また、本体よりも珍重されるのが白子である。寿命は9歳と推定されている。
全国の漁獲量は、20万トン以上の漁獲を占める主要魚種であったが、近年は15万トン前後になっている。200海里体制以前の1972年には304万トンにも達した。資源は、日本海北部系群、根室海峡群、オホーツク海南部群、太平洋系群に分けられる。漁獲量の多いのは太平洋系群で全体の90%以上。漁法は、沖合底びき網が主体。定置網では5千トン程度が北海道、青森で漁獲されている。寿命は10年以上。
イカ類では最も多いものの、全国の漁獲量は2011年までは20万トンを超える漁獲があったが、その後漸減し、2020年には5万トン弱にまで減少。寿命は1年。東シナ海で発生する冬季発生系群と北陸沿岸で発生する秋季発生系群がある。かつては乾燥させて加工していたが、今では生食の利用が広がっている。主漁場は対馬沿岸、日本海中央部、津軽海峡、三陸沿岸など。
その胴体は細長く円錐型で、姿形が槍の穂に似ている。通常は透明性の高い体色をしているが、興奮時には茶褐色の色素を強くする。早春から産卵期に入り、各地の沿岸に集まってくるため、春が漁期となる。寿命は1年で、太平洋系群と対馬暖流系群がある。漁法は底びき網が主体で、2020年の漁獲量は合計9千トン。「するめ」はケンサキイカとともに最高の等級とされる。
胴が丸みを帯び、胴の縁に渡って半円形のひれを持つ。外見はコウイカに似るが、甲は薄くて透明な軟甲である。おもに大型個体が産卵のため浅場にやってくる春から夏にかけてが旬だが、地方によっては秋に浅場で成長した幼体を狙って漁獲する。
太平洋は関東から、日本海側は北陸以東から東シナ海にかけて漁獲される。体内に多量のいか墨をもっており、イタリア、スペインなどではこれをライス、パスタ、魚シチューといった料理で用いる。コウイカのスミは、かつてはセピアと呼ばれる重要な染料だった。
全国の漁獲量は1980年代2万トン前後で推移、その後減少したが1998年以降は増加し、近年は1万5千トン前後が漁獲されている。資源は東シナ海から日本海に分布する東シナ海系群と瀬戸内海系群に分かれている。瀬戸内海の春のサワラは特に有名である。近年、操業自主規制や資源回復計画の取組みが行われている。寿命は約6年。
最近の漁獲量は、1.7〜5.3万トン程度で推移している。このうち0.6〜1万トンが定置網で漁獲される。資源は根室海峡・道東群、道北群、道南群に分かれ、前者は根室海峡で大半が漁獲され、道北群は、オホーツクから日本海の底びき網、刺し網等が主体で、道南群は北海道南部海域での刺網、定置網等が主体である。
春先の産卵期に沿岸に回遊し、明治末期から大正期の最盛期には100万トン近くの漁獲高があり、北海道ではニシン漁で財をなした網元の「鰊御殿」が建ち並ぶほどであった。1950年代から激減し、その後不漁が続き4千トンまで減少したが、2019年には15千トンと増加した。網目を大きくするなどの保護策や稚魚放流の結果、2000年代に入り資源量が増加してきている。江戸・明治時代には鰊粕に加工され綿花などの肥料に使用されたが、現代は塩焼き、フライ、マリネや「こぶ巻き」などの加工品としても利用されている。
マルソウダとヒラソウダの両種を指す混称でもあり、両種はマルソウダガツオ、ヒラソウダガツオと呼ばれる場合がある。名の通りカツオの近縁で、カツオよりは小型でカツオと異なり捕獲した際などには腹側に縞模様が出ない。一本釣り、まき網、定置網などで漁獲されるが、特に定置網で年間4~5千トン程度漁獲されている。鰹節と同様の方法で「宗田節」に加工し、関東風のそばつゆなど濃い口の日本料理に利用されることが多い。ヒラソウダは、三重県伊勢志摩地方では「手こね寿司」、静岡県伊東市では「うずわめし」に使われる。
全国の漁獲量は近年1.5万トン程度。一定の海域に定着する魚種であるため、栽培漁業の主要な対象種になっている。千葉県沖から三重県沖の太平洋中部系群と和歌山県沖から鹿児島県沖に至る太平洋南部系群、瀬戸内海東部系群、瀬戸内海中・西部系群、日本海西部・東シナ海系群、日本海北・中部系群に分類される。日本海側の系群は定置網の重要な対象種の一つになっている。寿命は15年〜20年。